「湿度は60%を維持しています」。
設備の環境管理で、よく聞く報告です。しかしこの数字だけでは、サーバーラックの背面で結露が起きるのか、その作業場で熱中症のリスクが高まっているのかは判断できません。相対湿度は、温度によって意味が大きく変わる指標だからです。
同じ60%RHでも、5℃の冷蔵倉庫と30℃の工場では、空気が含んでいる水分の量も、結露のリスクもまったく違います。
MONNIT ALTA ワイヤレス温湿度センサーは、相対湿度だけを測る機器ではありません。温度センサーを内蔵し、その2つの実測値からクラウド側で5つの指数を算出します。本記事では、1台の設置で得られる合計7項目のデータと、それぞれが現場のどの判断に使えるのかを整理します。
なお、製品の使用や機種校正については、ALTAワイヤレス温湿度センサーの製品ページをご覧ください。
ALTA Wireless Humidity and Temperature Sensors/ALTA ワイヤレス温湿度センサー
実測は2項目、残り5項目は算出値
本センサーは、シリコンベースの高精度デジタル湿度/温度素子を採用しており、相対湿度(%RH)と温度を同一の素子で同時に測定します。温度表示は摂氏と華氏を切り替えられます。
実測しているのは、この2項目です。そしてMONNITのクラウド監視システム「iMonnit」が、この相対湿度と温度をもとに、次の5つの指数を算出します。
| 区分 | 項目 | 単位 |
|---|---|---|
| 測定値 | 相対湿度(RH) | %RH |
| 測定値 | 温度 | ℃ / ℉(切替可) |
| 算出値 | 露点(Dew Point) | ℃ |
| 算出値 | 水分重量(Moisture Weight) | g/kg |
| 算出値 | 暑さ指数(Heat Index) | ℃ |
| 算出値 | 湿球温度(Wet Bulb) | ℃ |
| 算出値 | Humidex | ℃ |
(表1 1台の湿度センサーから得られる7項目)
ここで重要なのは、後半の5項目が「別のセンサーで測っている値」ではなく「計算された値」だという点です。追加の機器やオプションは必要なく、1台の設置で7項目が同時に手に入ります。その一方で、計算の入力が相対湿度と温度である以上、この2つの実測精度がすべての指数の土台になります(後述)。
5つの指数と、それぞれの使いどころ
| 現場の課題 | 有効な指標 |
|---|---|
| サーバー室・電子部品倉庫の結露、カビの発生 | 露点 |
| 乾燥・塗装工程の水分負荷、除湿能力の評価 | 水分重量 |
| 屋内作業者の熱中症対策、休憩判断 | 暑さ指数、Humidex |
| 蒸発冷却の効率、空調設計の基礎値 | 湿球温度 |
(表2 現場の課題と、判断に使える指標)
露点(Dew Point)|結露リスクの判断に
空気中の水分が冷やされて水滴に変わる温度です。単位は℃。
使いどころは、結露リスクの管理です。「相対湿度60%」と言われても結露するかどうかは判断できませんが、「露点12℃」と分かれば、表面温度が12℃を下回る箇所から結露が始まると判断できます。サーバー室の冷却配管、電子部品倉庫の外壁側、冷蔵設備の周辺など、局所的に温度が低くなる場所を持つ現場では、露点は相対湿度よりも直接的な判断材料になります。カビの発生条件の評価にも使えます。
※露点はその空間の水分量を表す値です。実際の結露は「その場所の表面温度」との関係で決まるため、表面温度が下がりやすい箇所の把握と組み合わせて使ってください。
水分重量(Moisture Weight)|温度条件が異なる地点を比べる
乾燥空気1kgに含まれる水蒸気の重量です。単位はg/kg。
空気が実際に運んでいる水分の量そのものを見る指標です。相対湿度と違い、温度によって値が上下しないため、温度条件の異なる複数の地点を横並びで比較できます。乾燥工程や塗装工程での水分負荷の管理、空調・除湿機の能力評価、外気導入量の検討などに向いています。iMonnitでは、設定した高度(Altitude)を加味して算出されます。設置場所の標高を正しく設定しておく必要があります。
暑さ指数(Heat Index)|屋内作業者の熱中症対策に
温度と相対湿度から、人が体感する温度を算出した値です。単位は℃。
屋内作業環境の熱中症対策に使えます。気温だけでは判断できない「湿度が高く、汗が蒸発しにくい環境」の危険性を、ひとつの数値で示せます。工場、倉庫、厨房、空調が効きにくいエリアでの作業計画や、休憩を取る判断の目安になります。
※これは日本の労働衛生分野で用いられるWBGT(暑さ指数)とは算出方法が異なる別の指標です。WBGTは輻射熱も考慮しますが、Heat Indexは温度と相対湿度から求めます。法令やガイドラインでWBGTが求められる場面では、その代替にはなりません。
湿球温度(Wet Bulb)|蒸発冷却の効率を評価する
湿った布で覆った温度計が示す温度に相当する値です。水が蒸発するときに奪われる気化熱を反映します。単位は℃。
蒸発冷却(気化式冷却)の効率評価、冷却塔やスポットクーラーの性能検討、空調設計の基礎値として使われます。通常の温度(乾球温度)との差が大きいほど、蒸発による冷却が効きやすい環境だと判断できます。
Humidex|体感温度をもうひとつの式で見る
気温と湿度から、人が実際に感じる体感温度を数値化した指標です。単位は℃相当。
暑さ指数と同じく体感温度の指標ですが、算出式が異なる別の値です。Humidexは露点をもとに算出される点が特徴で、カナダで用いられている指標です。快適性の評価指標として暑さ指数と併用したり、海外拠点と管理基準をそろえる場合の共通指標として使えます。
算出値の精度は、元の温湿度精度で決まる
5つの指数は、すべて相対湿度と温度から計算されます。したがって、実測値の信頼性が7項目すべての信頼性を決めます。
特に注意が必要なのは、相対湿度が温度依存性の強い指標だという点です。精度を検証する際は、温度が基準器と正確に一致していることが前提になります。温度が数℃ずれていれば、相対湿度の比較そのものが成立しません。MONNITが案内している精度検証の要点は、次の3つです。
- 測定の前に、一定の温度・湿度環境へ45分以上さらす(ソーク)
- 同じ環境で安定した値を示す、信頼できる基準器を用いる
- 相対湿度は温度依存性が強いため、温度を基準器と厳密に一致させる
また、仕様書に記載された精度は「製造時点」における湿度素子の精度です。経時的な精度を保証するものではなく、校正証明書の代替にもなりません。粉塵・化学物質・水分への曝露は精度に影響します。推奨動作範囲(Normal Range)を外れた環境、特に80%RHを超える高湿度下での長期使用では、60時間で最大+3%RHのオフセットが生じ得ます。推奨範囲内へ戻せば時間とともに校正状態へ自己回復しますが、極端な条件への長期曝露は経年劣化を加速させます。
測定値のトレーサビリティが求められる用途には、NISTトレーサブルな校正証明書のオプションがあります。ISO 17025認定ラボで試験され、ISO 9000などへの適合が必要な場面で利用されています。湿度センサーの校正証明書の有効期間は6か月です。ただしこれも「試験した時点で仕様内であったこと」の証明であり、有効期間中の精度を保証するものではありません。継続的にトレーサビリティを示す必要がある場合は、有効期限に合わせた再認証を運用に組み込んでおく必要があります。
現場で使うための設定
しきい値とAware(注意)状態
湿度・温度のそれぞれに上限(Above)と下限(Below)のしきい値を設定できます。測定値が範囲を外れると、センサーはAware(注意)状態へ移行し、通知の対象になります。
ヒステリシス(Aware State Buffer)
しきい値の付近で通常状態と注意状態を頻繁に行き来する「チャタリング」を防ぐ設定です。たとえば上限を90°、バッファを1°に設定した場合、90.0°を測定して注意状態に入ったあとは、測定値が89.0°まで下がるまで注意状態を維持します。下限側も同様に、しきい値より1°高くなるまで通常状態には戻りません。
現場での校正(オフセット)
現行のALTA湿度センサー(ファームウェア14.x以降)は、校正値をセンサー本体に保存できます。安定した環境で読み値を落ち着かせ、基準器との差をオフセット欄に入力して保存すると、次回のチェックイン時に本体へ適用されます。たとえばセンサーが20℃、基準器が18℃であれば「-2」を入力します。校正値が本体に保存されるため、表示値・チャート・通知ルールの判定が、すべて補正後の値で一致します。
よくあるご質問
露点と湿球温度は、何が違いますか
露点は、空気を冷やしていったときに結露が始まる温度です。湿球温度は、水が蒸発するときに奪われる気化熱を反映した温度です。露点は結露リスクの判断に、湿球温度は蒸発による冷却の効きやすさの判断に使います。
空気が乾いているほど湿球温度は通常の温度(乾球温度)より低くなり、相対湿度が100%に近づくと、乾球温度・湿球温度・露点は近い値になります。
ヒートインデックス(Heat Index)は、WBGT(暑さ指数)の代わりに使えますか?
代わりにはなりません。どちらも暑熱環境の指標ですが、算出方法が異なります。WBGTは輻射熱も考慮するのに対し、ヒートインデックスは温度と相対湿度から求めます。
ALTA ワイヤレス温湿度センサーが測定するのは温度と相対湿度のため、WBGT値の算出には対応していません。法令やガイドラインでWBGTが求められる場面では、WBGTに対応した測定器をご利用ください。
5つの指数を得るために、追加のセンサーやオプションは必要ですか?
必要ありません。5つの指数は、実測した相対湿度と温度からiMONNIT側で算出されるため、センサー1台の設置で7項目を確認できます。
湿度センサー1台で、温度も記録できますか?
できます。温度は算出値ではなく実測値です。1台で温度と湿度の両方を継続的に記録できます。
MONNIT無線センサーに関するよくある質問は、以下のページもあわせてご参考ください。
まとめ
相対湿度は、それ単体では判断材料になりにくい指標です。温度センサーを内蔵し、露点・水分重量・暑さ指数・湿球温度・Humidexまで算出できるということは、1台の設置で「結露」「水分負荷」「作業者の安全」「冷却効率」という、異なる切り口の判断材料が同時に手に入るということです。
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